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「文字禍」の読み解き方

昨日、

「文字ノ精ガ人間ノ眼ヲ喰ヒ荒ラスコト、

猶(なお)、蛆虫(うじむし)ガ胡桃(くるみ)の

固キ殻ヲ穿(うが)チテ、

中ノ実ヲ喰ヒツクスガ如(ごと)シ」

について、その内容を分かりやすく述べよ。

という京大の過去問を紹介しました。

今日はこの問題の読み解き方について紹介します。

それではいきますよ。

まず、蛆虫は文字の精のたとえに見えます。

そして、人間の目はクルミと対応するようです。

ここでちょっとした問題があります。

中島敦はなぜクルミをえらんだのでしょうか?

クルミはごつごつしてはいますが、球体に近いと言えなくもありません。

しかしそれなら、ピンポン玉でもよいはずです。

ですがピンポン玉を食べたがる蛆虫はいませんね。

それでは葡萄はどうでしょうか?

りんごはいかがでしょうか?

そこで別の視点からもう一度この文を見てみます。

文字の精霊が目を食い荒らすさまと、

蛆虫がクルミをむさぼる様子には重大な類似点があります。

どちらも一見したところでは食い荒らされたことがわからないのです。

よく見ればクルミには小さな穴が開いているかもしれませんが、

かなり注意をしてみないとわからないでしょう。

外から中身が食い荒らされている様子も、もちろんわかりません。

人間の目のよしあしも、裸眼ですと外から見ただけでは判明しませんね。

そういうわけで、クルミはこの文における目のたとえにふさわしいのです。

余談ですが、文字の精が蛆虫にたとえられているのは、

文字の精に対する悪いイメージを強調するためのものです。

蛆虫にあまりポジティブなイメージはありませんよね。

以上、京大過去問「文字禍」にでてくる愉快な比喩問題について

取り上げてきました。

最初はとっつきにくく思うかもしれませんが、

慣れてしまえばどうということはありませんので

楽しんで解いてもらいたいと思います。